以前にお問いあわせがあって、今回修理を引き受けることになりました。
症状は後輪を回してもスピードメータが反応しない、とのこと。
スピードメーターの計器単体なら動く、とのことなので、センサまわりの不調のようです。
WEBで検索するといくつかヒットするので、比較的よくある故障のようです。
先人のWEBを熟読、メーターの構造を十分にチェックしてから取り掛かります。
センサーはシャフトドライブのリアハブに付いていて、リアハブに刻まれた歯車状の凹凸にマグネット&コイルのピックアップが反応してパルス信号を発生します。
コイルから発生する信号は三角波っぽい微分波形、このままではメーターを振らせることはできないので、波形整形回路がメーターASSYの中に入っています。
この基板で0.1V~1V程度の微小な信号を増幅、速度に応じたパルスに整形します |
以前コンデンサが液漏れしたらしく、コンデンサが交換してあります。
ただ基板の状態が悪く、腐食&剥離のため断線してしまっていました。
こうなってはセンサの反応がないのも道理です。
かすかに残ったパターンから回路図を起こし、どう接続されていたかを見つけ出します。
回路図を起こすのは手間ですが、行き当たりばったりで部品を交換しても手もどりが多いだけ。
それにメーカーの設計者の意図を読み取るのは勉強になります。
書き起こした回路。電圧電流は実測。機能は推定。 |
意外だったのはセンサ信号をコンパレータ回路で受けていること。
いったんリニアに増幅しているとばかり思っていました。
スピードが上がるにつれ、センサの信号レベルも大きくなっていきますが、ローパスフィルタで
受けることでうまくバランスさせています。
後段の回路も一工夫。ローパスフィルタを通した上で増幅回路にヒステリシスを持たせています。
パルス性ノイズの対策と見ました。
一点読みきれなかったことは入力抵抗を+-で違えてあること。(5.1k と 8.2k)
LPFの定数のため、というよりわざとオフセットを発生させているのかなと思いますが、はたしてどうでしょうか。停車時など、0km/h付近のノイズ避けを意図しているのかも知れません。
今回の修理には直接関係ありませんが。
パターンの修正とコンデンサの交換。剥離したパターンは悪さをしないよう取り去ります。
入力のコンデンサはタンタルですが、わずかながら逆電圧がかかる回路です。
今のところ大丈夫そうですが、両極性の電解コンデンサに予防交換。
修理が済んだらまずは単体テスト。
白クリップからは0.1Vp-p程度の矩形波を入力 |
出力は約6V振幅。常用オシロは故障中なので、30年もののロシア製オシロにて。 |
つぎに組み合わせテスト。
トランスからもれた交流磁界でセンサを動作させてみました。
ACアダプタの漏れ磁束を拾ってる様子。50Hzで55km/hくらい? |
私の作業はここまで。後はお返しして実走テストしていただきましょう。
(BMW K100RS 2V スピードメーター)
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